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■対談■

ニッポン人よ!
 いまこそ「観光」に目覚めよう (2)


千葉の豊かな観光資源をもっと知らせたい、知ってほしい

ショート■僕は本当にもったいないと思うのは、成田に着陸するときに飛行機が旋回して降りていくでしょ、窓から千葉の里山がきれいに見えてくるんですよ。とりわけ5月頃の田植えの時は、本当に素晴らしい風景。こんなにきれいなカントリー・サイドが上空から見える空港というのは、他の国にはまずないです。

カマーゴ■ない。それは本当にないです。成田に降りる時の風景は、もう本当にビューティフルの一語に尽きますね。

ショート■けれども、飛行機の窓からのそのほんの一瞬だけね。成田に降りたら、そこへどうしたら近づけるのか、まったく情報もなければアクセスのサービスもないでしょ。待っているのは、東京直行の成田エクスプレスとスカイライナーとリムジンバス。ともかく成田に降りたら、いかに速く東京に出るかというのが勝負になっている空港ですよね。

カマーゴ■空港では確かに千葉の落花生は売ってるけれども。

ショート■おみやげで落花生を売るよりも、実際に落花生を作っているところを見せることができたら、本当にきれいでいいんだけどな。

カマーゴ■海外から日本に来たときの、日本の空港の印象はたぶん世界最低でしょう。いちばん最初の玄関である国際空港の印象はとても大切ですよ。
 たとえば日本のなかで、いちばん様々な人が出入りするのはコンビニでしょう。コンビニのマーケティングはすごいですよ。空港もコンビニと同じ発想でもっと便利にならないとね。短い旅の人、長い旅の人、遊びの人、仕事の人、どんな人でも必ずここを通って行く。だからとにかくまず空港での印象を徹底的にフォローすべきなんですよ。そこにこそお金をかけるべきです。

ショート■ともかく日本人の意識、千葉県民の意識が現実に変わっていく必要があると思いますね。そのあたりを啓発していけば、いかようにも変われると思うんです。まず千葉に、カントリー・ワーク構想が必要でしょう。欧米の感覚だったらこれはとっくに起きてるはずなんだけどね。千葉には世界に通用する観光資源が豊かにある。それはやっぱり、千葉の文化、歴史、生活です。

カマーゴ■さっきケビンが「もったいない」という言い方をしたけれど、日本語で「もったいない」という言葉は、カントリー・サイドの暮らしから来ているでしょう。伝統を守る文化、人間の気持ちがよく出ていると思います。都会と田舎の文化の違いを象徴的に表しているのではないかな。消費文化、消費経済ではこの「もったいない」という言葉は出てこないでしょうね。

ショート■昨年ロンドンに行ってきたけれど、週末は本当にたくさんの人が1時間くらいかけて郊外に出て、カントリー・ウォーキングを楽しんでますね。そしてどんな小さな駅でも、地図があって、インフォメーションがあって、歩いていくとコースガイドがある。
 日本の郊外もみんなそんなふうになるといい。都会の人たちが、都会を抜け出して郊外で遊ぶ。高齢化社会にはもっと必要とされてくるでしょう。

カマーゴ■何はさておき、外国人じゃなくて日本人自身のために必要です。

ショート■日本でも江戸時代の遊びは、郊外に出て歩く、旅をするということだったでしょ。僕のうちの近所でも、道が二股に分かれるところには、道祖神がいて、成田何里、船橋何里って道標が置いてあるところが残っていたりしてね。
 でも残念なことに、日本人の考え方の中に、昔のものはできるだけ排除して新しいものと置き換えようという、明治以降の傾向が強くあるように思います。

カマーゴ■そうですね。戦後からみると、日本を海外に自慢するという話があまり聞こえてこない。トヨタ、ソニーといった企業文化ではなくて、もっと日本人としてのプライドやユニークさ、日本の宝物といえるようなもの、海外でも通用するものがもっとあるはずですよね。
 日本が海外から学ぶ歴史の時代は、もう終わったんです。むしろ日本の良さと、海外の良さとを競争させたり協調させたりしながら、共同で何かをやる時代です。例えば、日産自動車はゴーンさんを連れてきたけれど、決してそれは海外から何か新しいアイデアを導入して学ぶということではなかった。ゴーンさんがしたことは、日本の人材と組織の良いところを引き出すということでしょう。日本企業の改革をするのに、ルノーとゴーンさんが協力しただけですよ。
 これからの時代に大切なのは、単純な競争というのとも違う、たぶん互いに学び合い、協調しながらの競争なんですね。そこでは、もう日本は「外と内」をはっきりと分けることはできなくなる。外国人と日本人という分け方も、もうとっくに意味がなくなってきていることに気づくべきです。
 文化の面でも、日本のソフトは強いと思います。黒澤明にしても、日本のアニメにしても、そういうところをいろんな面で出すべきですね。

ショート■本当にそう。僕は日本に来て、日本の自然や暮らしを見て、エコロジストになった人間だから、本当に「もったいない」(笑)と思うね。


ケビン・ショート●1949年米国ニューヨーク生まれ。大学で物理・電子工学を学ぶが、ベトナム戦争に徴兵され、1971年に陸軍兵士として駐日。日本で初めて「異文化」体験に目覚める。軍の仕事をしながら上智大学国際部(現・比較文化学部)に入学、日本史、日本文学などを学んだ後、アラスカ大学で人類学修士号取得。再び日本に戻って小樽の小さな漁村に3年間住み込み、フィールドワークを行った後、スタンフォード大学で博士号を取得。16年前から千葉ニュータウンに在住し、エコロジスト、環境生態学者として活躍。現在は東京情報大学環境情報学科教授。著書に『Dr.ケビンの里山ニッポン発見記』『ケビンの観察記海辺の仲間たち』『ケビンの里山自然観察記』『東京ネイチャー・ウオッチング』

オーランド・カマーゴ●1960年南米コロンビア生まれ、3歳で米国ニューヨークへ移住。ローチェスター工科大学卒業後、旧文部省派遣の英語指導主事助手(現・ジェットプログラム)として来日。茨城県教育委員会に所属し、水戸に2年間暮らす。筑波大学大学院で経済学修士号を取得後、旧科学技術庁(現・文部科学省)科学技術政策研究所の外国人研究員第1号に。その後、コンサルティング会社等に勤務。1992〜97年まで、幕張新都心ワールドビジネスガーデン内のビジネスインキュベーション施設、ジャパンビジネスセンター(JBC)にマネジャーとして勤務。著書に『異議あり!ニッポン人の国際化』

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