急速な少子高齢化、成熟化が進む経済社会において、NPO などの市民社会組織が、私たちの生活を豊かにする上で大きな可能性を持つ存在として注目されている。NPO 法人数はすでに1万件を超えた。全国各地域で、個人が専門的な知識を蓄積し、NPOを組織しながら、隣人や地域のことに関心を傾け、行政との新しい協働関係をかたちづくりはじめている。
立川市北部のけやき台団地に隣接するエルロード商店会に、NPO 法人「高齢社会の食と職を考えるチャンプルーの会」が運営する、「レストランサラ」と、地域情報の発信拠点「ひろばサラ」がある。イラストレーターをしていた紀平容子氏が、友人2人に、「自分たちが歳をとったとき、安全で健康的な食事をだれかと一緒に食べたい」と声をかけたことがきっかけで、このレストランの構想がスタートした。紀平氏たちが200万円を出資、その他の資金は友人や知人に出資を依頼して4 0 名の出資者から500万円を集め、開設資金の700万円をつくった。サラでは、魚と肉の2種類の日替わり定食をはじめとして、すべてのメニューに分量の少ないプチサイズを用意、高齢者の咀嚼の状況に応じて調理法も個別に対応するといった工夫を行う。レストランは団地内商店街の空き店舗を利用した。高齢者のためのレストランではあるが、いつも高齢者同士、若い人同士集まるのではなく、ごく自然にさまざまな人が出会える場であってほしいと考え、「高齢者向けレストラン」という看板はない。
今後、増大・多様化が見込まれる地域住民の福祉の要求に対応し、人々が年齢や障害の有無にかかわらず、住みなれた地域で安心して住み続ける「ノーマライゼーション」を実現するためには、何よりも地域住民の自発的な福祉への取り組みが求められている。地域住民が福祉サービスの利用者であるだけではなく担い手となり、NPO などの市民社会組織が参画することで、これまで市場メカニズムや競争原理が働きにくかった労働集約型の福祉サービス、行政やその関連団体が独占してきた公的事業に競争原理が生じ、サービスの多様性や質の向上が図られるだけではなく、行政のスリム化やコスト削減にも寄与する。さらに、NPOなどの非営利セクターは雇用を促進し、経済を活性化するためにも、今後ますますその重要性を増すことが期待される。
