特集●幕張IT都市への提言 future's vision-4
ユビキタスな都市へ――
集中と分散、その先にあるもの
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孫泰蔵■インディゴ株式会社代表取締役社長
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集中すべきものと分散すべきものの二極化現象
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「人間はアトムな存在である」と言ったのは、ニコラス・ネグロポンテだが、「アトム(原子)からビット(電子)へ」とデジタル時代の価値転換が進み、ブロードバンドの通信がどれだけ発展し普及したとしても、息づかいが分かる距離でのコミュニケーションというものは、絶対になくならないだろう。それどころか、アトムな人間存在こそが、ビットの時代のベースとして、よりいっそう問われていくことになる。
近接することのメリットが明らかに感じられるものは、ますます集中が進み、日常的な近接性があまり必要ないものは、どんどん分散化していく―― そうした傾向は今後ますます進展していくだろう。
さらに言えば、「分散」と「集中」が、それぞれ違った新たな意味をもって、際立ってくることになる。そして、それが決して二項対立ではないものとしてあること、相互補完的、あるいは相乗的に価値を増幅し合うものとしてあることを、認識する必要がある。
これからの時代は、「情報設計者」のような人が都市を造っていくことになる。情報の集中と分散を設計する者が、都市計画家になるのだ。
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集中を促す力としての「場所性」
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ビジネスモデルとワークスペースも、これからますます分離していくことになる。
ビジネスモデルそれ自体のオープン化や、アライアンスによるビジネスの進展などを背景に、いまや組織としての「会社」に所属していても、物理的に「会社」という括りにいる必要性は薄れつつある。これからますますその括りはバラけていくことになるだろう。
企業としての括りとして最後に残るのは、「資本」と「ブランド」、「トップのビジョン」しかなくなる。どういう資本、どういうブランドの下でビジネスを展開しようとしているのかといった点だけが、唯一の括りとして残る。その一方で、例えばシリコンバレーへ、あるいはインドのバンガロールへと、特定の場所に拠点性を求めながら、ビジネスは集中と分散をますます繰り広げていくことになる。
そのとき都市には、集中を促す力としての「場所性」が問われてくる。物理的な人やオフィスが集まって形成される「場所」がもっている力というのは、やはり強靱である。シリコンバレーには、そういう場所性がある。ハリウッドも、いまだに場所の魅力が強い。ロンドンも、デザイナー、クリエイターなどの先鋭的な人材が集まってくる。インターネット世代のアントレプレナーたちが形成したビットバレーの渋谷にも、まだまだ力がある。ソウルのテヘランバレーといわれる街中のストリートも、IT系の大手やベンチャーの一大集積地として注目を集めている。
ニューヨークでは、トライベッカ地区の再開発が活発に進み、アパレル企業やコンテンポラリーアートのギャラリーがたくさん集まってきている。新進のアーティストがスラム化していたトライベッカに住み着いて、個展やパーティーなどをやり始めて活気が出たところに、有名アーティストやデザイナーがショップを次つぎ出した。ひと昔前のソーホーで起きたことが、今度はトライベッカで起きているわけだ。そうしたサーキュレーションのあるところが、ニューヨークという場所の魅力、世界への情報発信力の源泉なのだろう。
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ユーザーのバケツリレーで広がる無線ブロードバンドの世界
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これから数年のあいだに、ひとことで言えば「ユビキタス(いつでも、どこでも、誰でも)」という文脈のなかで、山のように新しいモノが生まれてくるだろう。そして、ユビキタス環境をいち早く実現した都市に、新しいベンチャーもどんどん集まってくることになる。
ここで見逃せないのが、無線ブロードバンドの進展である。
例えば、すでに11Mbpsの無線LANを実現するIEEEの802.11bという通信規格のハブが、2万円程度の実勢価格で入手できる。半径100〜500mがこの無線のホットスポットになる。さらに802.11gという次世代規格が出てくれば、22Mbpsの超高速通信が可能となり、ホットスポットはさらに半径1〜5kmに拡大する。この無線LANを、会社や家庭や学校や公共施設がこぞって入れ始めた時には、全国至る所が受信可能エリアとなり、光ファイバー網を凌駕する無線ブロードバンド網の世界が広がることになる。
これは、インターネットがユーザー主導でバケツリレー型に拡大していったのと同様に、ユーザーの手によるブロードバンド網の実現を意味する。現在のNTTドコモの携帯電話網が、何兆円もの投資によるインフラに支えられている商業ベースの世界であるのとは全く対照的な、ユーザー主導の公共インフラの世界である。このようなブロードバンド網が形成されたとき、初めてNTTドコモの独占の構図は崩壊することになる。
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地上波こそコミュニケーションに開放すべきである
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米国では、まもなくスターバックスが、この無線LANを使ったサービスを始める。国内でも、IBMと東芝では、山手線の駅にこの無線LANを設置する計画を進めている。無線ブロードバンド環境は、これから急速に普及してくることになる。ここに日本独特の展開がみえてくる可能性も十分にある。
PCなどに装着できる11Mbps用のレシーバは、すでに5000円程度で購入できる。レシーバ自体がワイヤレスであれば、携帯端末でも、PCでも、手持ちの好きな端末をネットワークに繋ぐことができる。
極端なことをいえば、銀行のATMに行って、ATMと自分のレシーバを繋げることで、ATMの画面をあたかも自分のデスクトップのように使えるといったサービスすら可能になるだろう。あるいはまた、バービー人形がワイヤレスでネットワークに繋がる情報玩具になれば、子供たちがバービーちゃんを通じておしゃべりするチャット・コミュニティなども、簡単にできてくる。
こうしたインフラが、ありふれた環境として我々を取り囲んだ時に、本当のところ一体どのようなデバイスがありうるのか、正直いってまだ想像できていない。
ただ一つ言えることは、本当にこのユビキタスな世界に意味あるアプリケーションを創造していくには、電波行政が根本から変わる必要があるということだ。地上波こそコミュニケーションに開放されるべきなのであり、逆に現在の放送網こそすべて光ファイバーに移されるべきなのである。それくらいの思い切った政策を取って、初めて独自性あるコンテンツを生み出すための論議もできるのではないだろうか。
電子レンジに料理の調理時間がダウンロードできるなどというコンテンツでは、あまりにも発想が貧困だ。常時接続になって、ブロードバンド環境がもっと自由にハンドリングできるような環境が広がり、多数のユーザーが欲求不満を爆発させるなかから、初めて多様なものが出てくることになるだろう。
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そん・たいぞう●1972年生まれ。1996年、東大在学中に国内最大アクセスを誇る検索サイト、ヤフー(Yahoo!)のコンテンツ開発リーダーとしてプロジェクトを統括。同年、インディゴ株式会社を設立。学生企業家、インターネットベンチャーの草分けとして注目され、以降も数々の事業を興してきた。現在、グループを統括するインディゴホールディングス株式会社の代表取締役のほか、Pratica、インディゴの代表取締役などを務める。
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