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特集●幕張IT都市への提言 future's vision-3

勃興するネット・コミュニティ――
「靴に足を合わせる」社会から、「足に合わせて靴を作る」社会へ


信國乾一郎■フリープロデューサー


 インターネットの普及に伴い、ネット上に無数の「コミュニティ」が増殖している。この動きに対し、産業界も行動を起こし始めている。しかし、既存の大企業はネット・コミュニティをビジネスに繋げることに苦悩している。それは、既存の産業システムが、インターネットの登場を(ネット・コミュニティの登場を)想定しない時代の、「旧来型のシステム」を引きずっていることに構造的な原因がある。



潜在していた満たされないニーズの顕在化

 第一に、既存の産業システムが、「大量生産・大量流通・大量販売」を前提にした「最大公約数的なニーズに向けられたシステム」であること、があげられる。
 そもそも、インターネットの出現がコミュニティへのニーズを作り出したわけではない。今まで放置され、分散して存在していた満たされないニーズ(unmet needs)が、インターネットにより繋がり束ねられて顕在化した姿。これが、今ネット上に無数に出現しているコミュニティである。しかし、元々切り捨てられていたような小さな二−ズの束なので、顕在化はしても、「大量生産・大量流通・大量販売」のシステムに乗るようなサイズのものではない。
 あるPDAのメーカーは、ネット上にユーザーフォーラムを持ち、ヘビーユーザーによって商品に対する活発な意見交換がなされるコミュニティを形成している。しかし、そのメーカーの開発担当者は、「彼らの意見を聞いて商品を開発したら、発言した彼らは確実に買ってくれるだろうが、一般受けはしないから数は売れない。だから商品化はできない」と言っている。これは、「今まで切り捨てられていた小さなニーズを繋げ、束として顕在化させる装置としてのネット・コミュニティ」と、メーカーの「大量生産・大量流通・大量販売というビジネスシステム」の構造的なギャップを表す典型的な事例である。


知識と経験を共有するユーザー・コミュニティへ

 既存の産業システムがネット・コミュニティをビジネスに繋げられない第二の原因は、「消費者との情報格差」を収益の源泉としていることである。言い換えると、「消費者が商品市場についての情報を十分持っていない場合には、高い利益を上げることができる」ということである。海外旅行市場において、旅行商品比較検討情報誌の出現によって、相場が形成され、さらには価格の下方硬直性が働いて、旅行代理店の利益率がどんどん低下したことはわかりやすい事例である。
 一方、コミュニティは、消費者の間に「知識・経験の共有」を作り出す効能がある。構成員間の知識・経験格差が大きい市場において、コミュニティは最も有効に機能する。典型的な例は、出産コミュニティや海外勤務者のコミュニティである。そのコミュニティに加入する際には、自分が経験していないこと、知らないことばかりで、教えて欲しいことだらけなのに、出産や海外勤務を終え、そのコミュニティを卒業するタイミングでは、逆に教えてあげることのできる情報をたくさん持っている、ということになる。このような市場では、コミュニティへの所属欲求が極めて強く、かつコミュニティがソリューションとして非常に有効に機能するが、企業の側から見れば、コミュニティが機能すればするほど、「消費者との情報格差」が解消されてしまい、自社の市場の利益率の低下を招くことになる。


ネット・コミュニティへの不可逆な流れ

 「コミュニティでなければ解決できないこと」「既存の手段に比較して、コミュニティの方がよりよいソリューションを提供してくれること」がある、ということを消費者はすでに知り始めている。その意味で、ネット・コミュニティの勃興は不可逆な流れである。
 新しい社会には、新しいシステムが必要である。「大量生産・大量流通・大量販売のシステム」も、「消費者との情報格差を高収益の源泉とするやり方」も、そもそも、消費者に対して「足を靴に合わせて履かせていた」ようなものである。そろそろ産業界も旧い時代のシステムを捨て去って、「足に合わせて靴を作る」システムを新たに構築するタイミングに来ているのではないだろうか。

のぶくに・けんいちろう●1965年生まれ。 89年株式会社リクルート入社。 96年に個人からの投稿だけで構成する巨大コミュニティサイト「じゃマールON THE NET」を創刊し編集長に就任。2001年退社、独立。
よせがきコム(www.yosegaki.com/株式会社サイドビー・ネットワーク)、GOZANS(www.gozans.com/株式会社バーチャルクラスター)など、多数のネット・コミュニティ・サイトをプロデュース

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