第一に、既存の産業システムが、「大量生産・大量流通・大量販売」を前提にした「最大公約数的なニーズに向けられたシステム」であること、があげられる。
そもそも、インターネットの出現がコミュニティへのニーズを作り出したわけではない。今まで放置され、分散して存在していた満たされないニーズ(unmet needs)が、インターネットにより繋がり束ねられて顕在化した姿。これが、今ネット上に無数に出現しているコミュニティである。しかし、元々切り捨てられていたような小さな二−ズの束なので、顕在化はしても、「大量生産・大量流通・大量販売」のシステムに乗るようなサイズのものではない。
あるPDAのメーカーは、ネット上にユーザーフォーラムを持ち、ヘビーユーザーによって商品に対する活発な意見交換がなされるコミュニティを形成している。しかし、そのメーカーの開発担当者は、「彼らの意見を聞いて商品を開発したら、発言した彼らは確実に買ってくれるだろうが、一般受けはしないから数は売れない。だから商品化はできない」と言っている。これは、「今まで切り捨てられていた小さなニーズを繋げ、束として顕在化させる装置としてのネット・コミュニティ」と、メーカーの「大量生産・大量流通・大量販売というビジネスシステム」の構造的なギャップを表す典型的な事例である。