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■資料編■ベイタウン世代ヒストリー

ベイタウン世代の21世紀


 幕張ベイタウンの地域社会を構成する人口ボリュームゾーンは、物心がついた時には高度の消費社会の渦中にいた1960年代生まれの世代である。また、急速に進行する少子高齢化の桎梏 も表面的には背負っていない。ここでは今年満34才(68年生まれ)から40才(62年生まれ)を狭義の“ベイタウン世代”と仮称し、世代としての経験や記憶の深層を探り、彼らとベイタウンの未来を重ねてみることにする。
 ベイタウン世代は、60年前後に生まれた「新人類」と71年〜74年生まれの「団塊ジュニア」に挟まれた年代である。もちろんベイタウンには新人類も団塊ジュニアも多いが、彼らのようにライフスタイルや消費特性の面で社会的に注目されたことはなく、世代総称は冠されていない。あえていえば、36才より上の年代が77年創刊のポパイに象徴されるカタログ世代(またはマニュアル世代)、そして下の年代は渋谷をステージにした渋カジのグラフィティ世代に含まれるが、いずれもそのリーダーは新人類や団塊ジュニアである。その狭間に埋もれていた世代が、21世紀になって初めて「ベイタウン世代」として社会にインパクトを与える機会がやってきた……。


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ベイタウン世代の原風景
――地域社会崩壊の70年代


 GNPがアメリカに次ぐ2位となった翌年、1970年代は大阪万博によって幕をあけた。その会場で日本に初めてマクドナルドが登場し、翌年に銀座四丁目の角に華々しく出店して、食の消費スタイルの変化に大きな影響を与えた。70年代は家電製品の普及が一巡し、個人消費の時代に入る。そして、マクドナルドに代表されるファースト・フード、ファミリーレストラン、渋 谷PARCO、また店頭にある商品の情報を提供して買物行動に直結したファッション誌の an・an や街のエンターテイメント情報誌ぴあの創刊など、生活の主領域は家を飛び出して街に広がる。その背景には、地域社会の崩壊があり、70年代に中学生以下であったベイタウン世代 (34才から40才) の原風景は、アメリカ型の消費スタイルの家庭生活と地域社会に寄りつかない大人達の姿である。団地やマンションが我家の記憶である人も多い。


色々なことがあった80年代
――メディアを世間とする感受性


 80年、自動車生産でアメリカを抜いて世界のトップにたち、83年には浦安に東京ディズニーランドがオープンし、翌年マクドナルドは1兆円企業になっている。アメリカにおけるディズニーランドとマクドナルドの誕生はともに1955年であり、アメリカを代表する消費文化が日本に完全に根付いたのが80年代初頭である。
 まだ中高生であったベイタウン世代は、記号的な差異が消費される「なんとなくクリスタル」や第一次ブランドブームの年代よりは少し若く、当時はやったクラスター・マーケティングのターゲットにもされず、意味なく“分類”された。
 まず、79年から開始された共通一次試験を契機にする偏差値によって学校や生徒の資質の分類に始まり、82年頃には「ネアカ/ネクラ」 の二つに分けられ 「オタク」 というレッテルも経験している。これらの分類に対しては、女子高校生の制服を図鑑にしたり、お笑いブームにのって笑い飛ばしてかわしていた。しかし、85年頃には、小沢雅子の 「新・階層消費の時代」(85年) に呼応する 「マル金/マル貧」 という、今となっては笑えない分類に至っている。
 ベイタウン世代は、70年代を通してすでに崩壊している地域社会の上に築かれた、家庭や学校のフェイクさを感じとる敏感な感受性をもっていた世代である。予備校生金属バット殺人事件(80年)、「積み木くずし」(83年)などのドラマや校内暴力の激化(82年)など、80年代の前半に地域社会に続いて崩壊した家庭や学校の共同性に代わって、メディアが提供する世界を世間の標準として生きることになる。
 学校を核にしたベイタウンの街づくりに共感する彼らの原点はここにあるのかもしれない。だとすると、それは家族の絆の再生も同時に強く意識しているはずである。


社会人となった90年代
――バーチャルな日常、リアルな世界


 ベルリンの壁が取り払われた89年で20紀は終わったという考え方がある(ジャック・アタリ 『21世紀事典』)。その時日本ではついでに昭和が終わりバブル経済も陰りが見えてきた。物心がついた時には、人間は道路も歩けば月の上も歩くものだと思っていたベイタウン世代にとって、湾岸戦争から始まった90年代は、続くPKO、阪神大震災やオウム事件もバーチャルな非 日常ではなく実感のあるリアルな日常である。
 バブルの恩恵を享受するには少し若すぎた年代には「仮想と現実の区別がつかない」などという感覚はない。21世紀は自分達の時代といえる最初の世代なのである。

なかやま・すすむ●1947年生まれ。
マーケティングに関する企画・調査・研究が専門。中小企業診断士。株式会社ライフタイムメイト主任研究員、産能短大通信教育課程専任講師を務める。


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