■住民座談会■
わが街幕張ベイタウン
ブロードバンド時代のコミュニティづくり(1)
|
| |
住民が1万人を超えた幕張新都心の住宅地区、ベイタウン。
計画人口2万6000人の半分近くなってきて、ようやく「まち」になってきた。
30代から40代前半の世代が中心の、人口分布モデルとしても珍しい若いまちが形成されつつある。
この新しいコミュニティは、インターネットをツールとして使いこなしながら、21世紀の集住のあり方へ向けて、さまざまな可能性の模索を始めている。
|
|
| 出席者(発言順、敬称略) |
 |  |  |  |  |  |
| 伊藤祐造 | 鈴木勝彦 | 村岡英裕 | 松村守康 | 土堤内昭雄 | 司 会
蓑原 敬 |
平成12年入居 IT関連会社勤務 |
平成9年入居 フリーランス |
平成12年入居 大学教員 |
平成8年入居 自営業 |
平成8年入居 シンクタンク研究員 |
平成8年入居 都市プランナー |
|
|
みんなのブロードバンド
|
蓑原●ベイタウンでは、実際のコミュニティ活動と、インターネットとの関係が、有機的に連動しているという感じを強くもっています。多摩ニュータウンはじめ各所で、ネットを使ったコミュニケーションが進んでいますが、ベイタウンの展開の比ではない。今日は特にそういう観点から、ベイタウンのネット上の活動を引っ張っている住民の方々にお話を伺いたいと思っています。
マンションのブロードバンド化では、東の街に高速インターネットを引かれた伊藤さんのお名前は、雑誌でも紹介されるなど、いろんなところで目にしますが。
|
|
伊藤●東の街では、2000年の12月にインターネットの専用線を引きました。最初は、自分のためにより高速なインターネットを引くにはどうすればいいかというところから始まって、ネットで知り合ったマンションの何人かの方と話しているうちに、じゃあ、みんなで引き込んじゃおうということで検討し出したんです。
|
|
鈴木●じつは1月末、私のところでも10メガの回線をやっと引きました。既存マンションにブロードバンドを引くということがいかに大変か、伊藤さんのご苦労がよくわかりました。
|
|
伊藤●たしかに、マンションにインターネットを入れるというのは大変なことです。(笑) 一番のヤマは、住民総会ですね。入居者の3分の2以上の賛成が得られないといけないので、まず380世帯ほどの住民調査から始めました。最初の調査では、インターネットをやりたいというのは80軒ほどで、4分の1にも満たない。これではマンション全体でインターネットなんか、とても入れられない。
とにかくプロバイダを探して、地元のケーブルネットワーク千葉はじめ、3〜4社あたったんですが、ほとんどが埋設費用は管理組合で負担してくれという条件で、ザクッと見積もっても1000万円ぐらいかかりそうでした。住民の方全員に設備費を負担させるのは無理でしたから、必死に業者を探して、ようやくニューラルネットという会社が、「うちが設備投資として設備を入れます、加入希望者の方だけ利用料をいただきます」というスタイルでやってくれるというのを見つけました。
さっそく住民の方々向けに説明会を開いて、「こういう業者があるんだけれども、皆さんでインターネットを入れませんか」と提起したところ、非常に反響がありました。マンションの資産価値が上がるんじゃないかという方、インターネットってよくわからないんだけれど、私にもできるかしらという方、それぞれの住民の方の顔が徐々に見えてきたんです。
私も引っ越して3カ月目ぐらいだったんですけれども、もはや自分のためにインターネットを入れるという感じはなくなって、みんながコミュニケーションするためのインフラとして、住民全員のためにインターネットを入れないといけないという意識に変わっていきました。
説明の仕方もコロッと変わって、それまでの専門的な説明よりも、むしろ「インターネットを入れるというのは、皆さんとのコミュニケーションの場をつくるんですよ」という口調になっていって、どんどん良い反応が出てきました。結局、住民総会でもほぼ全員賛成ということで通ったんです。
|
|
鈴木●新しいマンションは最初から組み込めばいい話ですが、既存マンションに入れるのは並大抵のことではないです。マンションの管理組合の組織では、まったく情報化への意欲とか迫力が出てこない。
全国で既存マンションに住む人は37.7%いて、実は日本の情報化を遅らせているのはこの人たちだというレポートが、昨年8月に総務省から出ていました。(笑)
共有部の変更には区分所有法で4分の3の同意が必要だというのも足かせになっていて、ここの法律に手をつけるという話も最近あります。
|
|
伊藤●実際入れる段になっても、また大変。(笑)
「インターネット導入説明会」という技術的な説明会を何回もやりました。何もわからない方には、パソコンの斡旋から、実際にそのお宅に伺ってセットアップまでして差し上げました。これも、最初は私一人で始めたんですが、そのうち何人か「私もやってあげましょう」という方が増えてきました。
インターネットの技術指導がきっかけになって、それまではマンションでクリスマスパーティーをやったり、バーベキュー大会をやったりしても顔を出さなかった方も、集まりに出て来られるようになった。人の広がりがどんどん増えています。
|
|
鈴木●東の街のホームページを拝見しても、その中に非常に温かいもの、コミュニティをつくり上げようとするパッションを感じますね。
|
|
蓑原●やはり年齢層が若いというのは、かなり効いてるんでしょうね。しかも、高齢者の方へも、ちゃんと手ほどきをしてセットアップしてあげることで、十分入ってこれるという、そういう構造もできていく。
|
|
伊藤●そうですね。高齢者の方からの興味は高いです。
|
|
鈴木●伊藤さんのお話を聞いていても、ベイタウンでは反響が横に広がって、かなりうまく進むということはあるんでしょうね。
私もシニアの人たちを教えていますが、彼らの意欲はすばらしい。シニアのやる気のある人たちが、情報化についての考え方、ブロードバンドをどうしたらいいか、生活にどう取り入れていくかを率先して考え、発言する機会が広がることが、とても大切なのではないかと思います。そして、技術力を持つ若い人たちと手を携えて情報化を進めて行ければよいと思います。
|
回線が込み合う月曜日
|
|
村岡●私は、マンション1戸を買うという発想ではなくて、「まちを買いたい」という気持ちが強かったんです。道が広い、計画性がある、歩道が確保されている、公園が広いといった視点で探していったら、ここに行き着いた。ショールームを見学に来た際に配られた『幕張ベイタウン物語』を読んで、「沿道型住宅」という、マンションでまちをつくっていく、道を中心に考えていくという発想にも引かれました。
当時すでに、ベイタウンネットという掲示板と、松村さんのベイタウンニュースがインターネットで見られたんですが、都市計画に携わった人だけではなくて、住民までいろんなことを考えようとしている。知らず知らずのうちに引き込まれて、これから一体何ができるだろうかと、ワクワクしながら考えているところです。
|
|
松村●ベイタウンでは、だいたい皆さん2週間に1回というペースで、何かしらの会議や会合を開かれていて、トータルにすると毎週末、あちこちでいろんな地域の活動が起こっている。つまり土日のベイタウンは、実活動が忙しいので、インターネットの活動は休みなんです。さらに、ここが面白い点なんですが、月曜日に書き込みがドドッと来る。これはほとんど、土日の会合の議事録なんです。つまり、リアルの活動の情報公開、合意形成のためにネットを使うという仕組みが、すでにできあがっているわけです。
この議事録が1回でもヌケると、住民の合意形成に差しさわりが出てくる。だからネットを最大限に使って、持続させていく。ネットが明らかに「ツール」なんです。それも、住民にとって欠くべからざるツールになってきているという状況が、確実にあります。
以前は、議事録とか決議事項とかは、すべての番街を回って、掲示板に貼ったりとかしていたんですが、最近では 「熱心な家には大体パソコンが入っているはず」 という前提で、インターネットで配信すれば情報公開の義務を果たしているという認識になってきつつあります。
むしろ、住民の中のデジタルデバイドをどうするかという段階へ来ているんですね。パソコンを持っていないと、下手をすれば地域活動からも取り残されるという事態が起こりつつある。実際、「私、パソコンなんか絶対やらないわ」と言っていたお年寄りが、このベイタウンの地域活動での必要性からやり始めたという話を聞きました。
私は、それが自然なかたちだと思うんです。道具として不可欠になれば、だれでも毎日使いますよね。
|
|
鈴木●いまやっているシニア向けのIT講習にしても、エクセルとかワードとかだけでなくて、例えば、子供のTシャツをつくるとか、カードをつくるとか、趣味と技術をうまく融合して、つくることのパッションみたいなものが入ってくると、ITが最初考えていたものと全然違ってきて、自分なりに道具として使えるようになってくるんですね。
シニアのメンバーで230名ほどのメーリングリストもやっていますが、非常に活発ですし、かなり技術的なやりとりもあります。皆の趣味の領域も非常に広くて、そういう情報の交換でどんどん生活が豊かになっている。それはかなり実感としてありますね。
|
|
蓑原●このベイタウンの中心にいる30代、40代の方々を核にして、ちょっと努力をしていけば、ジェネレーション・ギャップを超えて、デバイドができない構造に動いていけるということなんですね。
|
|
鈴木●置いてきぼりにされないよう、地域としてはチャンスはつくっておく必要もある。私の住んでいるマンション集会室の中にパソコンを4台置き、そこにも10メガのラインを引いて、だれでも使えるようにしています。
|
父親もPTAに参画できる環境を
|
土堤内●昨年度、子供が通っている打瀬中学校の「パティオスの会」という、いわゆるPTAの会長をやりましたが、フルタイムで仕事をしている男性が会長になったというのは初めての例なんです。(笑)
最初はそんな仕事、本当に自分にできるのかと。学校の状況を聞いたら、一応先生方は全員、Eメールを持っているけれど、ほとんど使っていない。そこで 「少なくとも、私とのやりとりにはすべてEメールを使ってくれるなら、会長職は引き受けます」 というのを条件にしたんです。
つねづね、1人でも多くの地域の人が学校にかかわるには、ITの活用が重要だと思っていました。そこでまず最初に取り組んだのが、保護者向けのパソコン講習会です。事前にアンケートをやったら、初歩的なことを習いたいという人がかなり多かったので、じゃあ、ぜひやろうと。設備は、学校にコンピュータ室があって、ワード2000が入ったコンピュータが揃っている。
あとは誰が教えるか。ひょっとしたら地域の中に教える人がいるんじゃないかと思って、募集をかけたら、10人ぐらい手を上げてくださって、その筆頭が伊藤さんでした。(笑)さっそく「打瀬中PCサポーターズ」 という組織を結成して、メーリングリストを伊藤さんにつくっていただいて、これはうまく機能しています。
講習を始めた狙いはいくつかあるんですが、教員や保護者のITスキルを底上げして、PTA活動を円滑にすることが大事なんです。今年は役員ではないけれども、来年役員になったときに、すぐにメールを活用して仕事ができる、お父さんたちも時間の制約があっても、PTAの活動に参加しやすくなります。
蓑原●ベイタウンのホームページを見ていると、男性の方が断然、IT化のイニシアチブを取っておられますよね。仕事場につなげて、仕事場からチャットしているというのが意外に多い。本当は女性が一番家にいる確率が高いし、近くにいるのだから、いちばんアクセスしやすいはずなんですけれど。
土堤内●PTAの役員の方は、母親が多いんですが、情報環境に精通されているのは父親で、主婦の方々の多くは、自宅にあっても使っていなかった。そんな人たちも、IT講習や中学校のパソコン講習を契機に、使い出しているという状況です。
先週の土曜日も委員会があって、その議事録は女性の方が自宅でまとめてくれて、私の会社のほうへメールで飛んできて、朝9時にそれを見てちょこちょこっと編集して、学校へ転送する。学校はそれを見て、直すところがあれば直してプリントアウトして、皆さんへ配付する。先ほど松村さんが言われたとおり、月曜日にメールが飛び交うわけです。
蓑原●なるほど。高齢者と同時に、女性のほうにも確実に広がっていて、基礎的なインフラになりつつあると考えていいわけですね。
|
|
|次のページへ|
|CONTENTSへ|幕張アーバニストTopへ|幕張新都心Indexへ|
|