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特集●マクハリ第二創成期
■特別対談■
21世紀の幕張新都心
――マクハリへ。 夢のある話をしよう。(1)

堂本暁子■千葉県知事
月尾嘉男■東京大学教授、総務省総務審議官
 
幕張メッセのオープンとともにスタートした幕張新都心。
その歴史も14年目を迎えるが、時代状況はめまぐるしい変遷を遂げてきた。
いま改めて、21世紀へ向けた新たな都市戦略への展望、
夢のある構想が望まれている。
堂本知事が、都市政策の論客である月尾氏をゲストに迎え、
幕張新都心の未来に託す夢を語り合う。


幕張新都心 ―― 「融合的な都市」の
形成を目指し

月尾写真
月尾●ここ30年来の首都圏一円を見渡すと、神奈川はみなとみらい21、埼玉はさいたま副都心、そして千葉は幕張新都心と、それぞれ新しい都市空間を創るという挑戦をしてきました。そこに共通するのは、従来の都市計画とは違う発想で、「融合的な都市」を創りたいという動機だったと思います。
 江戸をはじめ近代の町というのは、住む、働く、遊ぶといった場所は、すべて近接していたわけですが、明治以降は、町を機能ごとに分けるという発想になり、都心はオフィス、海岸沿いは工場、郊外は住宅という機能分離で都市を創ってきました。
 しかし高度成長以降、このような分離では楽しい都市はできないという反省があり、もう一度、融合的な都市を創ろうという気運が出てきた。東京の再開発は難しかったので、広域首都圏での新しい地域開発というかたちで、さまざまな試みがなされてきたわけです。
 埋め立て造成地をゼロから開発した幕張新都心は、かなり上手くやってきたと思います。オフィス、住宅、メッセ、マリンスタジアム、大学など、仕事と生活に必要な機能をひと揃い集めて、新しい機能融合型の都市を形成してきました。その取り組みは、先進的だったし、評価できると思います。これからの課題は、こうした多様な都市機能をどう活用していくかということでしょう。

堂本写真
堂本●ちょっと文学的な表現かもしれませんが、最初に幕張を訪れたときには、「ここは日本なのかしら?」という印象をもちましたね。
 外国ですと、そうした融合型の都市というのは、中世からずっとあったように思うんです。パリはどこへ行っても、フランスパンを持って歩いている人がいるでしょう。
 日本では、なぜかどんどん職住分離が進んでしまって、オフィス街は夜や週末はまるでゴーストタウンのようになってしまう。東京の中心にあるオフィス街なんて、世界的にみても非常に奇妙な都市になってしまったと思うんです。職住の乖離は、首都としては良い方向ではなかったのではないでしょうか。
 幕張は、やはりその点で都市の理想を追い求めて、メッセがありオフィスがある一方で、住宅もあるといった良い街を創ったと思います。
 ベイタウンはデザインから見ても、外国の街のようでもあり、とても斬新な住宅地になりましたが、これからさらに良い街になっていきそうです。計画的に創られているのですが、住民の方々から色々とお話をお聞きしますと、かなり人間的なコミュニティというのが形成されているんですね。それがまだ表立っては現れてきていないんですが、ITの活用も非常に活発で、コミュニティの活動がまちをどのように育てていくのか、大きな期待をもっています。
 ただ、業務地区を見たときには、ニューヨークのような高層ビルが建っていながら、ニューヨークのオフィス街とはやっぱり違う。もっと都市としての活気とか賑わいをもたせていくには何が必要なのか、さらに考えていかないといけないところですね。


24時間、人を引き付ける
都市になるために


月尾●ITというのは、幕張のようなところには不利に働きかねない技術です。東京に近いということが、幕張の大きな魅力ですが、ITの進展によって、距離的な近接性のメリットは、急速に薄らいでいます。IT時代の都市としての戦略を、もう一度立て直す必要があるのですが、その時には、知事がおっしゃったような、まちとしての賑わい、楽しさが、重要になってきます。
 ITビジネスの新進企業や優秀な人材に集まってもらうには、楽しく食事ができる場所、遊びに行ける場所があるといったことも大切な条件になってくるわけですが、残念ながら、幕張にはまだそれほどはない。逆に東京に近いだけに、夜は六本木までクルマ飛ばして食事に行ってしまうということになってしまう。
 それからマンハッタンと比べたときの最大の違いは、ビジターが少ないことですね。もちろんメッセで催事があればたくさんの人が来られるでしょうが、夜にはほとんどの人は帰ってしまう。やはり盛り場的な賑わい、もっといえば猥雑性のようなものが必要とされている。それをどうしたら作り出せるのか、つまり、どうしたら24時間、人を引き付ける都市になれるかということが、次の戦略だと思います。それができれば、がらりと違った街になるでしょうね。

堂本●この6月に、駅前にシネマ・コンプレックスがオープンすれば、夜の賑わいが少しは変わると思いますが、今おっしゃったような本質的なところまで変えるのはなかなか難しいのでしょうね。
 やはり、ITベンチャーの方々などに集まっていただくには、先進的なIT談義ができる、同種の目的や興味をもったIT人間が近くにたくさん居る、そういう環境が必要とされているのでしょう。ハード面の便利さだけではなくて、IT人間が楽しめるソフト、満足できるソフトがどれくらいあるかが重要になってくるのだと思います。
 ITって、無機的なようでいて、なんだか血が通っているところのある不思議なものだなあって思ってるんですよ。例えば、六本木的な猥雑なところとか、あるいはすごい山の中とか、いわゆるITというイメージとは正反対のところで、実は盛んになっちゃったりするものでしょう。

月尾●人工的な都市がそういう雰囲気をもつには、時間がかかります。例えば、筑波研究学園都市も、最初は息抜きする空間がまるでなくて、研究ばかりしていると精神的に追い詰められる感じでした。それが次第に居酒屋ができたり賑わいが出てきて、ようやくくつろげるようになった。やはり成熟をみるには、20年、30年はかかります。
 人がコンピュータに向かっている、先端的な情報ビジネスに従事しているというだけでは、IT都市とか情報都市とは決していえない。疲れた時にエレベーターを降りていくと、雰囲気の違う場所があって、そこへ行くと他の人と共有できる情報が得られるという街であれば、そこには発展がありえる。そういう街を創っていくことが、幕張の大きな目標になっていくと思います。
 例えば、「幕張に行ってきたよ」というだけで、漠然とした雰囲気のようなものを味わえる、共有できるということが大切だと思います。
 情報というのには2種類あります。1つは正確で、しかも独占することに価値がある情報で、まさに情報ビジネスというものが対象とするような情報です。その一方で、社会の中には、曖昧だけれども共有されればされるほど価値が高まる情報というものがあるわけです。



昔ながらの東京湾の水辺を
どう生かしていくか


堂本●都市の活気を、いかに自然発生させるか、自発的に生じさせるか。すべて行政主導でも規制緩和だけでもうまくいかないですから、どういう仕掛けを作っていくか。最初は小さくてもいいから、次第に増幅していくような核ができるといいのでしょうね。
 整った輪郭をもった計画された都市の中に、ある種のはみ出した部分、くっついた部分に面白いものがたくさんできてくると、魅力的な都市になっていくと思うんですね。それが日本人だけでなくて、海外の方々にも「あそこに行くと面白い」と感じていただけるようでないと駄目でしょう。
 海岸のほうに遊びの空間ができれば、まったく違ってくるだろうと思いますね。

月尾●東京湾というのは、江戸時代から営々と埋め立てられ開発されてきて、三番瀬などは最後の浅瀬だといわれているわけですが、幕張新都心も埋め立て地ではあるものの、人工海浜や人工林を造っていて、人工的ながらもかろうじて、昔の東京湾の海辺を残している、首都圏でほとんど唯一の場所だと思います。しかし、十分にはそれを活用できていないようです。歩いて数分で海辺だという感じをいかに出していくか、海という自然をいかに共有していくかというのも、大きな課題です。そこには、幕張にしかできない展開というのがありうるでしょう。

堂本●サンフランシスコなんてとっても楽しい水辺を作っていますよね。ずらりとヨットが係留してあって、夕方になると人々が海へ出ていって、フィッシャーマンズワーフに世界中からの観光客なども集まって賑わいができています。
 陸と水の接している部分、吃水の部分というのが、その雰囲気づくりにはとても大切で、ただ賑わいを作ればいいということではなくて、今おっしゃられたような、自然とどう接するか、共有するかということがとても大事ですね。
 さらにいえば、千葉ならではの演出、獲れ立ての新鮮な千葉の魚貝や野菜など、ここでしか食べられないようなものが豊富にあって、例えば映画を見たあとに、海辺でおいしい食事を摂って、ホテルに泊まってくつろぐという、そういう都市型リゾートのスタイルができたら楽しいでしょうね。ディズニーランドのようなエンタテイメントとは、また違った楽しみ、大人を引き付ける高級な遊び、質の高いサービスのようなものなどが求められているのでしょう。



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