「エコマネー」というと、なじみのないものに聞こえるが、農村や漁村で行われている物々交換、あるいは「講」や「結」を「コミュニティ・ネットワーク」を活用して行なおうとするものであると考えるとわかりやすい。
「エコミュニティ」を構成する要素のうち、(1)「コミュニティ」に関するものとして、全国各地で深刻な問題となっている介護問題を解決するため、住民がボランティアで介護サービスを提供する場合、(2)「環境」に関するものとして、河口の住民が上流の山に広葉樹を植えて川の有機成分を回復する環境保全ボランティア・サービスや道路端その他の公共スペースに遺棄されたゴミを清掃する環境清掃ボランティア・サービスを提供する場合、(3)「文化」に関するものとして、住民が各地にある伝統芸能を復活させ広く伝承し、世界的な観点からみてもユニークな芸能を創造するためのサービスを提供する場合を例として取りあげてみよう。
具体的システムとしては、行政や企業、各種NPO、組合等の共同イニシアティブにより、NPOとしてエコマネー運営団体を設立する。エコマネー運営団体は、運営責任者と実際の運営を委託された記録調整者により構成される。エコマネー運営団体は、市町村当局や自治会と連携してボランティア・サービスのニーズを把握し、システムに登録する。ボランティアを志願する住民は、インターネットにつながったパソコンなどを通じてボランティアの提供を申し出、実行する。提供されたボランティア・サービスの価格は、住民とエコマネー運営団体との間で自由に決められる。同様のサービスが人によってさまざまに値付けされるのが特徴である。
住民は提供したボランティアの実績に応じて「エコマネー」の支払いを受ける。住民は「エコマネー」を保存し、将来自分が介護サービスを受けるときに支払いにあてたり、受け取った「エコマネー」を親族の高齢者に譲渡して、その高齢者が介護サービスを受ける場合に活用することができるし((1)の場合)、粗大ゴミの回収をしてもらうときに市町村等に払う手数料の支払いにあてたり((2)の場合)、市民会館で開催される音楽会やコンサート、絵画の展覧会等の入場料として支払うことができる((3)の場合)。また、(1)、(2)、(3)それぞれの場合の「エコマネー」を相互に交換することも可能である(
図3)。
このようなことを97年夏頃から考えはじめ、『エコマネー:ビッグバンから人間に優しい社会へ』という本を執筆するとともに、並行して関係の方々にこの「エコマネー」のアイデアをお話したところ、さっそく横須賀市で導入のための実験を行なってみようという話が持ち上がってきた(99年7月より実験開始)。
それ以降、草津市(滋賀県)、千葉市や栗山町(北海道)で具体的事業を推進しようという動きになっている。静岡県や愛媛県においては、県ぐるみで取り組もうという動きになっている。その他、山田村(富山県)、飯田市(長野県)、駒ヶ根市(長野県)、神戸・姫路市、中村市(高知県)や石垣市(沖縄県)等から積極的な反応が寄せられている。
提唱者の私としては、このようにエコー化する反響にむしろ驚いているが、関心を有する方々の期待にこたえるべく、99年5月エコマネーを活用した事業をサポートし、関係者をネットワークする「エコマネー・ネットワーク」(事務局は(財)余暇開発センター内に設置。
http://www. ecomoney.net/)を発足させた。「エコマネー・ネットワーク」の活動はそれを支える有志の情熱によって支えられている。今後全国各地から一人でも多くの人々が活動の輪に入っていただけることを期待している(
図4)。
このようにさまざまな地域が「エコマネー」導入に取り組みつつあるが、「エコマネー」は幕張のような新興都市において新しくコミュニティを創造しようとする場合においても、大きな効果を発揮することが期待される。このような「エコマネー」を「アーバン・エコマネー」と称するとすれば、「アーバン・エコマネー」の使い方としては、次のようなものが想定される。
(1)「幕張メディアサーフィン」が運営している高齢者向けのパソコン教室は99年3月からボランティアの協力を得てシニアネットを開設しているが、このシニアネットへの協力するボランティアの輪を拡大するため「アーバン・エコマネー」を発行する。
(2)コミュニティ活動の場として幕張ベイタウンの市立打瀬小学校など、学校を活用して運動会などすべての行事を住民参加型とし、参加する住民に対して「アーバン・エコマネー」を発行する。
(3)幕張のような新興都市においては、高齢者と子供との交流を促進することが必要である。このため「高齢者・子供デイケア・センター」を設立し、その運営をすべてボランティアベースで行ない、ボランティアに対して「アーバン・エコマネー」を発行する(高齢者用のデイケア・センターの運営をすべてボランティアベースで行なっている事例として、東京都町田市にある「ケアセンター成瀬」がある)。
(4)幕張に自然の営みを肌で感じることが出来るような「エコフォレスト」を配置し、自然とのふれあい、新鮮な空気、精神的な癒し、新鮮な食べ物などを身近に得られるようにする。この「エコフォレスト」づくりを住民参加のグランドワーク方式で行ない、参加する住民に対して「アーバン・エコマネー」を発行する。
(5)幕張と田舎の中山間地との住民同士の交流を促進するため、参加する住民に対して「アーバン・エコマネー」を発行する。交流の形態としては、例えば、幕張の住民が自分の庭やベランダで苗木を育てて、その苗木を中山間地に持っていき植林ボランティアサービスを提供する。中山間地の住民はこれに対してカルチャー・スクールを開設し、山村の文化などを幕張の住民に対して教える。この幕張の住民と中山間地の住民がそれぞれ提供するサービスに対して「アーバン・エコマネー」を発行する。
このようにさまざまな「アーバン・エコマネー」のアプリケーションが考えられるが、「アーバン・エコマネー」も〈貨幣〉である以上、「アーバン・エコマネー」を保有した者が他の用途に「アーバン・エコマネー」を使って、「アーバン・エコマネー」が循環していく工夫をしていくことが必要である。
「アーバン・エコマネー」は新興都市におけるコミュニティ創造の有力な手段である。その際参加する住民の範囲を拡大し、住民間の交流を拡大していくためには多目的ICカードを導入することが便利であろう。 ICカード型の電子マネーがコミュニティ再生に使われた事例としては、長野県駒ヶ根市などの例があるが、今後ICカードは健康保険証や住民基本台帳カードとして市町村単位で広範に導入されることが予想される。このICカードの記憶容量を活用して、「アーバン・エコマネー」としての機能を付加した多目的ICカードへと発展させることが可能である(
図5)。幕張がこのような多目的ICカードの先駆的取り組みを開始することも面白いのではなかろうか。