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幕張で「アーバン・エコマネー」はいかが
――都市型エコマネーの世界へ(1)


21世紀の社会はエコノミーとコミュニティが融合した
「エコミュニティ」への転換が目指される。
経済と文化と知恵を交換する「エコマネー・ネットワーク」の構築を幕張に提案する。


加藤 敏春■エコマネー・ネットワーク代表
     ■通商産業省サービス産業課長


新しい社会「エコミュニティ」の提唱


 21世紀を目前として、地球環境問題、少子高齢化社会の到来等に見られるように、20世紀型の大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムが行き詰まりを見せている。これに代わる21世紀型の社会システムはどのようなものであろうか?
 この問いかけに対する回答として、 私は「エコミュニティ」(Ecommunity)という新しい社会を、21世紀の各地域において構築すべきことを提唱している。この「エコミュニティ」においては、生活者である人間が、知識創造機能を有する「経済」(Economy)と帰属意識を感ずる「コミュニティ」(Community)が一体となった経済社会構造の下で、「自然」(Ecology)と共生し地球に優しく持続的な発展をめざすことが目的とされる。「エコミュニティ」においては、大量生産・大量消費・大量廃棄のシステムの中で物質的満足度をひたすら追求する社会から、コミュニティの構成メンバーが自己実現を達成する機会が保障され、コミュニティの視点からみれば失敗が許容される社会あるいは社会実験が許容される社会へと転換がなされる。この「エコミュニティ」を実現するために必要な価値は、従来のように「経済」に関するものだけではない。「コミュニティ」や「自然」に関する価値も同様に基本的な価値を構成する。

 この「エコミュニティ」においては、インターネットが「コミュニティ・ネットワーク」(後述)として活用され、生活者が何らかの意味で関係づけられ、その関係づけを利用して個々の知識が編集されたり、結びつけられたりして新しい知識を生み出す。知識は、国際的に異質な文化・価値基準と衝突しつつ自らのアイデンティティを問い直す過程で、しだいに価値、思想へと昇華し、発想の自由度の向上、イメージの深まりにつれて新しい独自の「文化」(Culture)を形成する。「エコミュニティ」を構成する第4の要素は「文化」であり、「エコミュニティ」の究極の目的は、「文化」の創造である(図1)。



「エコミュニティ」のイメージ

 このような「エコミュニティ」のイメージはどのようなものであろうか? 「エコミュニティ」における生活者は、ゆとりやアメニティとともに、自然の営みを肌で感じることが出来るような水辺や緑、歴史的な街並みや社寺仏閣などのオープン・スペースをまちの骨格に入れていくことを求めている。そのためには従来のまちづくりの発想を180度転換し、現在の広域化した都市を生活圏単位に細分化し、その核となる中心部をクラスター化・高容積化するとともに、生活圏と生活圏の間には自然の水や緑の空間、動植物が生息する豊かな自然空間が配置されるよう設計することが必要である。

 首都圏を例にとると、3300万人が一体となった巨大な都市構造を、人口数万人から数十万人の単位の生活圏で細分化し、それぞれの生活圏において、自立した経済社会活動が行なわれ、周囲の自然環境と共生する構造に改造しなければならない。



「エコミュニティ」を支える「コミュニティ・ネットワーク」

 「エコミュニティ」は、その構成メンバーである生活者一人ひとりが「経済」のみならず、「コミュニティ」、「自然」そして「文化」に関する具体的な活動を展開することにより形成される。このさまざまな活動を展開する上で必要になるのが、生活者を何らかの意味で関係づけ、その関係づけから個々の知識を編集することにより新しい知識を創造する「コミュニティ・ネットワーク」である。インターネットの高度な利用が進むアメリカでは、ネットワークの利用分野が企業内のイントラネットや企業間のエクストラネット、さらに家庭におけるホーム・ユースだけではなく、「コミュニティ・ネットワーク」の分野に拡大する傾向を見せている。ブラックスバーグ(バージニア州)、ボールダー(コロラド州)などの例が有名であるが、バージニア工科大学のコヒルとカバナーは、90年代初頭から始まった「ブラックスバーグ・エレクトロニック・ビレッジ」(BEV)がどのように構築され、市民生活やコミュニティに活用されていったかを鮮明に紹介している。

 これによると、人口3万6千人のブラックスバーグにBEVが正式に発足したのは93年のことであるが、町の当局とともにこの町にある大学(バージニア工科大学)と地域電話会社(ベル・アトランティック)がパートナーとして参加し、学校、図書館、マンション、企業などを高速のイーサーネットからインターネットに直結する専用線や、何百ものモデムのプールよりなる情報通信ネットワークが構築された。このような情報ユーティリティがブラックスバーグの教育を支え、経済活動を発展させ、コミュニティのメンバーの情報交換を増大させることによって、コミュニティ意識を高めた。

 コヒルとカバナーが繰り返し述べているのは、「コミュニティ・ネットワークはコミュニティのためのものである」という哲学である。高度の双方向コミュニケーションが必要なのは、「世界に対して発信」したり、「地球の裏側から情報をとってきたり」することではなく、コミュニティの中で濃密で高度な双方向のコミュニケーションを行ない、さまざまな協働を展開するところにあると主張されている。現にブラックスバーグの場合は、ネットワークが運用を開始してからわずか2年で、町のビジネスの半分以上がオンラインで行なわれるようになっている。

 わが国でも最近、図2で示すような〈コミュニティ・ネットワーク〉を構築する動きが盛んになってきている。さきがけとして85年に大分県のCOARA(パソコン通信ネットワーク)が活動を開始したが、九七年には〈電脳村〉として有名になった富山県山田村のコミュニティ・ネットワークが稼動した。幕張の「幕張メディアサーフィン」もこのようなコミュニティ・ネットワークの1つといえるが、未来型の幕張副都心における〈未来型公民館〉として高齢者向けのパソコン教室などの活動を展開し、更地の状態から新しいコミュニティを創造しようとしている点がユニークなところである。



エコミュニティの生活者がつくる「エコマネー」


 このような「エコミュニティ」を、コミュニティ・ネットワークを活用して創造していくためには、新しい〈貨幣〉が必要になる。有史以来の人間の活動を振り返ると、知識の創造・交換・交流活動が盛んになればなるほど、経済社会は活性化する。そして、知識の創造・交換・交流と〈貨幣〉が対応しない経済は、失敗している。このため 21世紀型のコミュニティである「エコミュニティ」を創造するための道具=〈貨幣〉として私が考案したのが「エコマネー」である。
  「エコマネー」は「エコミュニティ」を構成する価値、すなわち「経済」のみならず、「コミュニティ」、「自然」、「文化」に関する多様でソフトな情報をも媒介する21世紀のマネーのことである。「エコミュニティ」を実現するために必要な価値は、従来のように「経済」に関するものだけではない。「コミュニティ」、「自然」や「文化」に関する価値も同様に基本的な価値を構成する。「エコマネー」は「エコミュニティ」創造手段であり、正確には「エコミュニティ・マネー」と呼ぶべきものである。

 最近、世界の1600以上の地域(98年末)で導入されている「地域交換取引制度」(LETS:Local Exchange Trading System)に対する関心が高まってきており、 LETSのことを「エコマネー」と誤解する向きがあるが、LETSは貨幣部門における情報や価値を地域のみで流通する通貨で置き換えて媒介しようとするものであり、その発想は限定されている。
 「エコマネー」の構想力は、LETSのそれをはるかに超えるものである。また、「エコマネー」に類したものに、アメリカで活用されているタイムドルがあるが、タイムドルは介護など福祉の限られた分野で流通するものにすぎない。しかもサービスの価格づけは1時間当たり1タイムドルとしており、取引当事者の自由な値づけという観点からみると制約があるシステムである。
 「エコマネー」はタイムドルの発想も取り入れて、貨幣部門のみならず非貨幣部門にもまたがる新しい貨幣の世界を生活者主権という観点から構築しようというものである。



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