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■特別レポート■
マクハリ・ダイガク構想
−−知のプラットホームをどう作るか(1)


取材構成■桂木 行人


幕張新都心に、自由に誰でもが学べる開放された学習機関を創りたい。 「大学」ではなく片仮名「ダイガク」あるいは平仮名の「だいがく」。 この「ダイガク」は、情報社会の中で初めて可能となる。 しかし、単純なインターネットや衛星利用授業では「地域」の意味がない。 バーチャル・キャンパスとアクチャル・キャンパスが幸福な結婚をする、そんなダイガクが欲しい。 「東京の5大学、連合へ」のニュース(平成11年11月)は大学人のみならず一般の人々にもある種の感慨と歓迎を持って受け取られた事件だった。行政改革により国立大学の独立行政法人化が決せられ、それがまず一般教養の連合であれ、帰らざる河を一歩踏み出したのだ。そしてまたこの5大学が実は、縦型の知識や技能を専門教育する「カレッジ」であって、総合性を持った「ユニバーシティ」ではなかったことを改めて思い起こさせることとなった。明治以降、とくに戦後の新制大学以降、「理科」か「文科」という選択を少年時代から強いられ、長じて自分自身の「知の総合性」の欠如を思い知らされるとき、理想ではあれ、幾つになっても見果てぬ「ユニバーシティ」への夢はあるものだ。



いま何故「ダイガク」か

 新しい知識や技能を修得できる機会を社会的に整備することの意味は3つあるだろう。

(1)個人が何らかの理由で学習意欲を持ったとき、安いコストで、手近で、自由に履修できる社会的な共通インフラがあること。

(2)産業構造の変化に対応した新しい知識や技能を持った人材を、社会的に育てる合意をつくり、高度な専門知識を希望者に習得させること。

(3)地域社会に活力を作り上げる上で、生涯学習の振興、特に学習の成果を地域社会に生かすことを促 進することが、大きな役割を果たすものと期待できること。

 まず、(1)の個人の学習意欲が増大している社会的背景には、人生80年時代を迎えて、可能な限り長い期間職業を通じた社会参加を実現したいという傾向が強まっていることが挙げられる。  ところが企業社会では、年俸制の導入など個人の能力・実績を重視した諸施策や、通年採用の広まり、終身雇用の見直し、リストラなどによる退職・転職・出向等の勤労者の流動性が高まりつつあり、新規採用においても、学歴や学校歴を問わないとする企業が増えるなど、学歴以外の個人の様々な資質・能力を多様に評価しようとする傾向が拡大しつつある。この企業社会と人材との新しい関係変化は今後とも進んでいくものと予想され、このことに伴い、個人のキャリア開発の意欲は自衛的にも拡大していくだろう。

 女性も、経済的自立と職業を通じての自己実現を図ろうとする意欲が増大している。このための社会対応力のあるキャリアの開発や、また、子育て後の再就職に必要な能力の取得がある。社会的にも女性のエンパワーメント(女性が政治的、経済的、社会的、文化的に力を持った存在となる)が大きな課題となっているが、相変わらずのカルチャーセンター的な講座しか用意されておらず、これらの要求に見合うカリキュラムはほとんど整備されていない。
 元気な高齢者の社会参加意欲には強いものがある。ボランティア活動のほかに、定年後の第2、第3の就職など仕事による生きがいを求める傾向も高くなっている。  近い将来、労働力人口の減少に対応して高齢者の雇用・活用が現実の社会・経済的な課題となることも予想される。その意味でも、高齢者をゲートボールや温泉に棄民しているかに見える現状は、社会的資源の無駄使いといわれても仕方がない。



【アンケートより】
●青春は年齢ではないなどと、くだらないことを言うつもりは毛頭ありません。老人はどこまでも老人で、青春は若者のものです。さまざまな趣味(ヨット、オートバイ、ランニング、写真は現在もやっている)もありますが、趣味より楽しみなこともあり、どちらかというと、こちらに時間を割きたい。

 老後を楽しく過ごすためには、周囲の楽しくないことを改善する必要があります。前途ある忙しい若い人にはこうした後ろ向きの仕事を押し付けるわけにはいきませんから、暇な老人の出番です。神奈川県の海岸付近で生活しているため、「環境問題」がテーマにならざるを得ません。  海水の汚染、海岸のごみ、厚木基地、横須賀軍港を含めた米軍戦闘機による騒音などです。こうした問題を解決するための「個人運動」(名前が付けにくいのです。従来型の市民運動をやるつもりはありません)が老後の楽しみの1つです。いずれもさまざな専門知識が要求されます。基地の問題は当然、日米安保条約、アメリカの世界戦略などにつながってきます。そうした知識や場合によっては水質検査などの技能の取得も必要になるかもしれません。

 もう1つ、老後の夢としては、知的障害者のための社会や自然に開かれた「生活施設」の建設があります。「収容施設」ではありません。現在はささやかなボランティアしかできませんが、10年、20年かけてぼちぼちやろうと思っています。これも膨大な知識や交渉力などが必要になるでしょう。

 こうしたことに関係する知識や技術は、定番メニューを用意せざるを得ない「大学」では得られないですね。こちらから組織して問題を提起し、それに応えられる人材を「ダイガク」から呼ぶということはあるかもしれません。そんなアドバイザー、専門家の供給源としての「ダイガク」が欲しいですね。ダイガクも結局、カルチャースクールになってしまっては面白くありません。
 いくつかテーマをあげましたが、当然、変更はあります。日米安保条約などは10年後には反古になっているかもしれません。でも心配ありません。世の中には老人しかできないような社会的、政治的課題はいくらでもありますから。お楽しみはこれからです。(編集・52歳)



 (2)の産業構造を含む社会の変化が、企業と人材にサバイバルを強い、また新たなフロンティアへの出発を要請している。科学技術の進歩、情報化社会、国際化の進展など、企業は生き残りをかけて高付加価値化、新しい事業分野の創造を計っている。このため、個々人、チームの新しい能力獲得がさらに重要な課題と認識されてきた。

 従来、企業における人材教育は、企業風土と事業ドメインへの馴致、社内に蓄積された知識や技術、ノウハウの継承、社内の人間関係の円滑化、全体に均質で高い能力のゼネラリストを育成することを目的に、ジョブ・ローテーションと結びついたオン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT )として行なわれてきた。しかし、新たな戦略を立て、新事業を生みだし、それを展開させる能力が必要となっているときに、OJT は、それだけでは十分な対応力を発揮できない状況になる。また、ローテーションによる人材育成では時間がかかり、変化のスピードに対応しにくい。さらに、個人の創造性を培ったり、自律的な向上心を育むためには、「経験の伝達」を主とする企業主体の人材育成事業だけでは十分な効果をあげられない。
 こうしたことから、企業は多様なOff JTの実施、外部の教育機関等への教育研修の委託、さらにセルフラーニング支援などを積極的に進めはじめている。



【アンケートより】
●今後、いろいろな意味で伸びの著しいアジア、アフリカのいずれかの国語を身につけたい。これまでの技術開発の経験を活かし、技術移転の調整役と指導の両方ができるようにしたい(電気・43歳)。

●システム監査技術者、システムアナリストなどの知識と実践的な情報化のためのスキル(弁護士・36歳)。

●語学(英語、中国語、スペイン語くらいは最低)とITです。ITは専門的なものよりも、現在のコンピュータ技術の動きと様々な技術がどう使えるのかの基本知識と応用実習。ちなみに、ウェブデザインコース(海外の先端事例が学べる)があれば、なおベターです(広告・39歳)。

●これから日本でベンチャービジネスがどんどん誕生して、それをサポートするVCなども盛んになると思いますが、ベンチャービジネスをうまく評価する基準がまだ確立していないように思います。私も、将来エンジェルファンドのようなものが作りたいので、VBを正しく評価できる知識を取得したいです(コンサルタント・51歳)。

●表層的でないアイディアを発想するため「通信プロトコル」の基礎知識は必要です。社会的なナレッジマネジメント・コラボレーションにより仕事を進める今後の社会では、大学・会社の持つノウハウ・強い分野のデータベースへのアクセス能力は、一番必要な要素と考えます(通信事業・30歳)。

●(1)FP関連知識:金融関係、相続関係、税金関係、関連業界関係等々。最新の知識や情報を持つことで、顧客に更に高いコンサルテーションを行いたいと考えるため。?コンピューター関連知識及びスキル(特にインターネット関連)今後のビジネス展開にとって間違いなく重要かつ当然と思われるため。(2)語学(英語、中国語の会話能力)今後のグローバル化の中では当然と思われるため(金融・37歳)。

●(1)リスク対応新管理会計制度―経営環境変化、リストラに向けた組織運営制度、体制の整備のため。(2)インターネットとその活用ビジネス拡大に対応した著作権、知的財産権の国内外制度、法的対応―新ビジネスモデルの創出、育成、競争力強化のため。(3)地域活性化、ボランティア、NGO、NPO活動推進のための仕組み作りとメンバーの役割―新しいビジネスモデル、事業領域の検討、育成のため(電気・53歳)。


 (3)の地域社会については、文部省の生涯学習審議会報告をそのまま引用する。

 住民の地域活動・事業への参加を促進して、地域社会の課題解決や活性化を図ることが今日的な課題になっている。今日、地域社会は都市化と過疎化の進行、住民の著しい流入・流出、地域行事の減少、地域意識の希薄化等により地縁的なコミュニティとしての機能を衰退させてきた。このため、地方公共団体にあっては、地域住民の活性化や、特色・活力のあるいきいきとした地域社会づくりが大きな課題となっている。この場合、次のような理由により、生涯学習の振興、特に学習の成果を地域社会に生かすことを促進することが、地域社会に活力を取り戻す上で、大きな役割を果たすものと期待できる。

  第1に、生涯学習が盛んであること自体が地域が活性化しているか否かを示す重要な指標であるとともに、生涯学習によって活力ある住民が育成されることにより、そうした人々のネットワークが他のすべての指標での活動の力強い基盤になり得る。

 第2に、現在、各都道府県・市町村が抱える、ごみ処理、自然環境の保全、介護・福祉等の様々な現代的課題は、住民自らが学習し、理解し、主体的に関わろうとするときに初めて最も効果的な対処が可能となる問題であり、それだけに生涯学習の役割が大きい。行政部局のみでの対応は限界にあり、住民や民間の非営利公益活動団体等とのパートナーシップの必要性が言われるようになってきており、その場合、生涯学習とそれによる社会参加は不可欠の要素になっている。

 第3に、地域づくりにおいては、施設などのハードよりも事業等のソフトの方が問題であるという認識が大勢になってきている。様々な領域での住民の活動の蓄積、人間関係の広がり、まちづくりのたのリーダー・支援者の養成が課題となってきており、生涯学習の役割が一層大きく認識されている。

 第4に、近年、地域社会はこれまでもっていた地縁的な共同体としての機能を大幅に弱体化させていることに伴って、地域の教育力の低下が危惧され、地域社会における教育の活性化の必要性が増大している。地域の教育力を高めるためには、地域ぐるみでの生涯学習の推進が極めて有効であることから、地域社会が生涯学習の推進を前提にした地域づくりを進めることが必要である。



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