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次世代シンクタンクの条件■第五回

イニシアチブをネットワークする (1)

加藤秀樹●「構想日本」代表


構想日本は、民間の非営利型シンクタンクとして、また「市民の立場から発言していく」NPO団体として、いま非常に注目される存在である。九七年四月に正式発足してから、まだ一年余りだが、その間じつに活発でユニークな政策提言活動を展開し、着実に政治への働きかけを達成している。代表の加藤秀樹氏(慶應大教授)に話を伺う。



「思い」を実現するシンクタンク

―――加藤さんが構想日本を組織しようと思われた動機について、また大蔵省を辞められて外から政策提言を行おうと思われるに至った経緯などについて、まずお聞きしたいのですが。

加藤■いま世の中が成熟してきたなかで、出来上がった制度やシステムを壊すのが大変な時代を迎えています。官僚の仕事も限られた時間の制約のなかで、ある種の惰性といいますか、ある決まった枠のなかでしか身動きがとれないことが多い。大蔵省には二十三年間ほどおりましたが、やはり政策を作っていくパワーが、ここ十年ほど浅くなり弱くなってきています。私が入省した頃は、例えば新しい金融の理論などが出ると夜を徹して皆で勉強したり議論したりしたものですが、そういう雰囲気も急速になくなってきています。

 また本来、民主主義国家の役人というのは、これが改革だと言って勝手に走ったらいけないわけです。それは本当は政治家がしないといけない。それが出来ていない。そこで政治家も役所も政策形成能力が衰えてきているこの変革期に、外に出てもっと自由な立場で、どんどん新しいアイデアを生み出していきたい、また、すでに様々な知恵やアイデアを持った人達がいる。その思いを実現していきたい。こう思ったのが、大蔵省を辞めた理由です。

―――これまで日本は「霞ヶ関が最大のシンクタンク」と言われてきましたが、やはりそうした官僚主導の時代は終焉したということなのでしょうか。とはいえ、最近の官僚へのアンケートなんかを見ましても、一生懸命に日本を変えたいと思っている最もリベラルな集団ではあると思われるのですが。

加藤■それはまったくその通りです。思いだけはね。(笑)しかし、既得権益を変えようというのは、非常に困難です。大蔵省の人間だってみんななんとかしたいと思っているんです。しかし「そもそも論」とか「あるべき論」を大上段に振りかざして、すでにある制度を変えていこうとなれば、これはもう「世直し」になるわけで、巨大な組織に仕える一官僚の身分ではどうしたって限界があるわけです。いくら思いがあっても身動きがとれない。

 構想日本を作った目的というのは、まさに新しい政策を現実の世の中にはめ込んでいって、世の中を変えようということです。我々は「自ら政治活動は行わない」とうたっていますが、実際には本来政治がやるべきこと、政党や政治家がやるべきことをやっているとも言えます。

 現実にいまの政治家は、時間もエネルギーも金も、選挙に勝つということと永田町における権力闘争に注ぐことで精一杯で、それ以外のことに費やす余裕がない。政治の中身どころじゃないというのが現実です。政策のほうにばかり一生懸命になっていると落選してしまう。日本では政治家になったら本当の意味での政治がやれないというジレンマがあります。

 とはいえ議員が五〇〇人いたら、せめて五〇人は「何かがしたい、何かを変えたい」と考えている人はいてもらわないと困るわけで、我々はそういう人たちと党派を超えて連携し、動いていこうというわけです。

 シンクタンクを作ろうなんてことから出発しているわけではなく、なんとか政治の機能を正しく働かせるためにはどうしたらいいかということから逆算して、現在のような組織や活動に至っているわけです。今の日本のシンクタンクというのは、すべて「器」先にありきでしょう。「思い」はあとから。それでは何も変えられない。そもそもの「思い」が先になければだめなんですよ。


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