先日オーストラリアでOECDの会議があり、都市問題グループの一員として、土地利用や交通問題についての議論に参加する機会があった。
OECDでは、都市の環境問題についてのルールづくりが求められている。廃棄物規制、排気規制、もちろんエネルギーの効率的な利用も大きなテーマである。急速な都市化の波のなかで、様々な形で環境問題が出てきており、都市の対応が急がれている。
欧米で昨今盛んに取り沙汰されているのは、環境に負荷のかからない都市交通のあり方である。アメリカはもちろん、ヨーロッパも、自動車保有率では日本を上回り、車優先社会が深刻な問題となっている。過密度の高い都市を中心に、「カー・フリー・シティ」=自動車の無い社会への転換を図ろうという動きが出ている。
日本では施設を作る際にも駐車場の付置義務があったりするが、ヨーロッパの都市では逆に、駐車台数の上限を決めて、車の利用台数をコントロールしようという規制も導入されている。さらには公共住宅の賃貸料を決める際などに、車の無い人へのインセンティブを付けるといった案も採用され始めている。
アメリカでも、まだ多数派とはいえないが、ヨーロッパ型の環境派が徐々に出てきている。その一つが、「ニュー・アーバニズム」という、郊外都市の開発運動である。都心から電車に乗って移動できる郊外の駅沿いに街を造り、界隈にはショッピングセンターなどのにぎわいがあって買い物や食事もでき、自動車や徒歩、あるいはバスで家に帰れるという、東京の郊外都市のような位置づけである。
ニュー・アーバニズムの都市づくりでは、郊外住居のメリットを生かした環境共生のユニークな試みが見られる。例えば、都市の真ん中に野生動物のサンクチュアリ(保護域)を創り、人は周囲の窓から鳥、きつね、たぬきなどの野生動物を見ることができる。自然な場所との共生という安心感が、街の人気を呼ぶ。
さらに、いくつかのサンクチュアリを自転車道路で相互に結んで散歩道のようにし、役所の名刺にも自転車のロゴマークを入れて、「環境に優しい自治体」を売りにしたりもしている。このような自転車道路のネットワークを率先して作る街の例も徐々に増えてきている。
車を使わない街づくりというにがベースにあるという意味では、ヨーロッパのカー・フリー・シティと非常に似ているが、コンセプトはあくまでも大都市集中を緩和させ、郊外分散型にしていこうという発想である。
アメリカでは非常に広い国土に散らばって生活しているのに対して、ヨーロッパは狭い所に稠密に住んでいる。ヨーロッパの場合には、都市への集中はまず大前提としてあり、そのうえで周囲に影響を与えない環境共生ルールを確立するという志向が強く、アメリカとはまた違った問題意識がベースにあると思われる。