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対談■都市とメディアとネットワーク

デジタル時代の憂鬱な世代と
インターネット時代の明るい国家を考える(1)


橋本典明■メディア評論家
松原隆一郎■社会経済学者



無規制なインターネットと
マスメディアの動揺


松原■神戸の酒鬼薔薇事件があって、インターネットは相当みんな集中して見たんじゃないですか。

橋本■ええ。僕も、かなりリアルタイムで、犯人の実名情報とか見ました。

松原■最初、複数の名前がいくつかのサイトで流れて、どれが本当かわからなかったんだけど、産経新聞が、「どこそこのプロバイダは、宣言文のうえに犯人の実名を載せている情報ページを流している」と報道しちゃったことで、どれが本物の情報かが分かってしまったという皮肉な事態になりましたね。

橋本■近所のウワサ話とかを誰かが勝手に書き込んで、世界中に広がっていった。今までマスメディアがやっていたことが、普通の個人でも簡単にできるようになって、それにまた世間が過剰反応するじゃないですか。これは結構快感でしょう。

松原■情報の流れが、もう普通じゃなくなっちゃってますよね。メディアの信用のあり方が、従来の常識とかモラルとかでは、支えられなくなってる。

橋本■新聞記者とかマスコミの人たちから見たら、これまで知ってても隠してきたアングラ的な情報を、こう簡単に一般の人に流されたんじゃ、たまんないです。マスメディアの特権をインターネットに奪われて、ホントに頭に来る行為だったと思いますよ。

松原■今回の事件では、一部マスメディアの報道でも物議が醸されましたけど、警察からは何か規制とか牽制がされたのかな。

橋本■少なくともあの事件に関しては、警察はまったく動いてないです。むしろ野放しにしてましたね。

松原■インターネットが本当に便利に感じられたのは、阪神大震災が最初だったでしょう。危急のときに、個人の発信する身近な情報がいかに役立ったことか。

橋本■ところが、大震災も酒鬼薔薇事件も、ネットユーザの感覚からいったら、同じだった。

松原■僕は神戸出身なんだけど、読売新聞に原稿を書くので、酒鬼薔薇事件の街に行ってみたんですよ。僕の歩いたかぎりでは、あの街には、コンビニがない。自販機がひとつもない。お店も喫茶店が一軒、本屋がその隣に一件、その二階にビデオ屋があるぐらい。一方で変だと思ったのは、標語が異常に多い。それもたとえば「お父さん、お酒は家でお母さんと」とか、さらには、中学のフェンスの上に「解き放て、秘められた力」というのが赤い字で書いてある。

 あの地域は、交番もなくて、自警団でみている。ロバート・オーエンの「新しい町」のような、社会主義的なコミュニティをめざしているという人もいて、なんかそういうきれい事に対して、悪いことが非常に際立つんだな。


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