「水の回廊」の出発点幕張に話を戻そう。海浜幕張駅を降り、地表レベルに立つと、まずは高層ビルが目に飛び込む。配置のゆとりから威圧感はない。ただ残念なことに海辺に近い水際都市であることが感じられない。国際大通りの突き当たり、幕張海浜公園からの視野が開け、その先に海が見え林立するヨットの帆柱が見えたとすれば、この町はまたひと味違っていたに違いない。そうした想いから描いた夢が「幕張メッセアイランド」である。マリーナ機能を持つと同時に、「水の回廊」への旅の出発点であり、終着地となる。
最近ではモダンな住宅が立ち並び、ビジネス街特有の無機質だった新都心に人の賑わいと生活の匂いが生まれた。とはいえ、新都心全域に渾然一体を求めるのは無理かもしれないが、なにかゾーン間での不連続が気になるのは私だけだろうか。
新都心の西端に浜田川が流れている。いわゆる三面張りで、不法係留の船が目に付く味気ない川だ。その河口にマリーナの建設計画があると聞く。
そこで、花見川と浜田川を内陸部で、かつ住宅街区内に取り込む形で繋ぎ、運河として機能させ小さな船だまりも抱き込ませると、新たな賑わいの軸が生まれ、分断されがちなゾーン間に新たな連続性も生まれよう。身近なところに水があり、舟影が常にある風景は、まさしく潤いのある水際都市の生活景観そのものである。
海水を取り込む手法は、潮入り庭園の浜離宮恩賜公園が身近にある。水際という環境資源を再認識し、日常生活の場に水を取り込んでおくことは、非常時における防災面でも有効に機能するはずである。
運河と船旅に興味をお持ちの方は拙著『運河再興の計画―房総・水の回廊構想』をご一読いただきたい。
(1997年秋)
みうら・ゆうじ●日本大学理工学部交通土木工学科教授
1936年生まれ。都市環境と交通工学を専門に研究、地球に優しい透水性鋪装の研究・開発と普及で'87年度環境賞受賞。「房総・水の回廊」構想の言い出しっぺとして、その実現に向けた啓蒙・交流活動を主導。主な著書に『透水性舗装ハンドブック』『河川・法面工法に見る工学的生物学の実践』ほか