溜■開校当時、インタビューを受けて、「うちの小学校は街の核になるんだ」なんてことを生意気にも言ったことがあるんです。打瀬小学校と打瀬の街は、同時スタート。氏神もなにもない、海の上にできた新しい街に、全然知らない人たち同士が集まってできた街です。
「打瀬小学校は未来の卵だ、幕張新都心の未来の卵の中に一六九名の子どもたちが入っているんだから、巣立ちまで力を貸してください」という思いで、「学校だより」というのをつくって、住民の方々全戸の郵便ポストに入れてるんです。
たったザラ紙一枚ですが、皆さん学校がみるみる身近になった、非常にうれしかったとおっしゃってくださった。また、学校へも呼び込みもしました。子どもが通っていようがいなかろうが、おいでくださいって。「参加型学校行事」と名づけて、すべての行事に、全住民を呼びかけた。一緒に運動会をつくる。一緒に子ども祭りをつくる。うちの運動会は、親は企画から参画して、選手としても出る。おとなも子どもも、好きな種目を選択して出場します。
いま三年目を迎えて、マンションごとの自治会が連合自治会にまとまってきたり、文化施設やインターネット、ケーブルテレビづくりなど、様々な研究会がスタートしています。
近藤■いま地域の中の生活というのは、二十四時間のコンビニエンスストアがあって、お隣に醤油を借りに行かなくても、いつでも買える。なるべく近所とはつき合わないほうが、お互いに心地よいという生活のパターンができていて、地縁というのはどんどんなくなってきていますよね。普通の学校だと、地域といっても、やはり親が出てくるだけだし、それさえ避けたいという風潮すら最近ではある。
学校に生徒を通わせてないコミュニティにまで、学校が情報を提供して、しかもその人たちにまで学校を開放するということは、日本ではちょっと画期的なことだなと思います。
溜■この学校は塀もない、門番もいない。グラウンドにも中庭にも、自由に入り込めます。住民に「学校のグラウンドにどのくらい入りましたか」とか、「遊具を使いましたか」とか、調査してるんですが、非常に多い。
近藤■いまの学校は、むしろ入れないようにわざと工夫している。
溜■そう。必ず、四時半過ぎると、許可なく入っては困るとかね。
ここのお母さん方は、学校へ来て初めて話ができた、学校へ行って初めて、会話らしい会話をしたと。学校へ来ることが、彼女たちにとってはパーティーの場だったんです。
近藤■同じクラスのお母さん同士だけだと、閉じた関係になりがちですし、たとえマンションの隣に同じ学校の子が住んでいても、「おはようございます」とは言っても、玄関の中には入らないような、縁の薄いつきあいになってきてますよね。
溜■それについては、私どもで意図的に仕組んだことがあって、クラスや学年というグループとは別に、マンションごとのグループをつくったんです。「フレンド」と名づけて、毎週火曜日、お昼はフレンドごとに給食を食べて、五時間目はフレンドごとのいろんな活動を行ったり計画したりする時間に当てているんです。
マンションごとのグループですから、卒業後に別々の学校に進学しても、ずっとつながっていくわけです。うちの学校の最大の特色は、そういう年齢を超えたマンションごとの地縁というのかな、それを大事にしていることでしょう。