インタビュー■
「アジアの奇跡」を考える
―21世紀日本のための新・入亜脱米論(2)
華人ネットワークと華人資本が
アジア経済の鍵を握る
――日本が「アジアの奇跡」に果たした役割については、どう評価されますか。
アベグレン■もちろん日本から技術が移行されたことは、確かにひとつのキーでした。そして、日本の高度成長が、米国市場への展開なくしてありえなかったように、NIESの発展もまた、日本市場、米国市場との活発な経済循環によってもたらされたといっていいでしょう。
日本にしてみれば、この「アジアの奇跡」が、日本を先頭とする一群の雁行のような飛翔であると、そう思い続けたいところでしょうが、残念ながらそれがすべてではありません。
もっと重要なキーは、アジアにおける華僑ネットワークの活躍です。
NIES諸国のなかでも、韓国、台湾、香港、シンガポールには、成長のための基盤が一定ありましたから、さほど驚くことではなかったが、もっと東南の地域、亜熱帯地域にまで発展がもたらされたのは、華人のリーダーシップがあったからです。
たとえば、インドネシアの民間資本の七〇〜八〇%は、華僑資本が占めています。人口はたったの三%です。タイにおいても、銀行資本は華人が握っており、華僑企業のCPグループが、多角的な産業化に打って出ています。シンガポールは、いうまでもなく華僑文化、華僑経済の国です。マレーシアの場合は、やや例外で、政界・財界の指導者は、ほとんどマレー人です。
いずれにしても、華人のビジネスセンス、ビジネスカルチュアは、アジア経済の最も重要なキーファクターといえます。今後は、華僑企業の産業資本投下は、これからおおいに注目すべきでしょう。
――今年に入って、アジア経済に停滞の気配が漂っていますが、三十年間の発展の勢いは、まだ衰えていないとみられていますか。
アベグレン■この三十数年間、アジアの経済成長率は世界の経済成長の三倍を記録しつづけてきましたが、ここ一、二年の動向が少し心配なところでしょうか。
タイでも通貨や株価の低落がみられています。今年の夏は、香港の株価も三日間で十五%の暴落をしました。香港ドルはまだ強いですが、やや経済の悪循環が起きているとみられます。アジア全体の成長率は、九%からいったん五%程度に落ちるでしょうが、その後回復するかどうか、この低落がどれほどの深刻な問題なのかは、もう少し慎重に様子を見る必要があります。
ただ言えることは、東南アジア全体の強み、底力はまだまだありますから、これは一時的な現象であり、必ず経験しなければならない過渡的な調整期であると、私はそうとらえています。
――その日本は、調整期間に入って五年ぐらい経ちますけど。
アベグレン■そうですね。(笑)でも、去年の日本の経済成長率は案外高かったでしょう。G7の国のなかで、最も高かったんですから。
ここのところ、日本経済については、悪口ばかりで、どうも消極的な論調になっていませんか。貿易収支の黒字を見たって、去年の成長率を見たって、日本経済が非常に強いということは、はっきりしていますよ。日本の製造企業は、資本金のコストを低く抑えて、新しい設備投資をして、もっと強くなれるでしょう。
アジアの将来的な成長のためには、日本の市場はもっとオープンにならなければだめですね。アメリカ任せにしないで、日本がアジア経済の中央に立つんだという意識で、健全な市場を率先して形成していかなければいけないじゃないでしょうか。
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