CONTENTSへ幕張アーバニストTopへ幕張新都心Indexへ
前のページへ


ネットワーク都市の「家族」

―繋がり合うものと背を向け合うもの(2)


内なるデジタル化の命じるままに、
少年は…


 今年神戸で大きな事件を引き起こしたとされる少年とその両親はごく最近、次のように自己を語ったという。

 《少年 一九八九年、小学校入学と同時に一人暮しだった祖母と同居しはじめた。自分を大事にしてくれた祖母だけが大切な存在だった。親は家族なので愛情を感じるが、ほんとうの姿をみせず仮面を付けて接していた。九三年四月、小学校五年生のとき祖母が死んだ。祖母のいのちを奪った死に抑えきれない好奇心がわいた。ナメクジやカエルを殺して解剖したが、満足がいかず六年生のころから猫を殺しはじめた。中学入学後は猫では満足できなくなり、人の死を理解したいという欲望を持った。どうしたら人は死に、死後どう変化するかなどを考え、人を殺すときの感覚についてホラービデオや漫画を見て空想を膨らませた。今年二月、学校ではじめて履いた靴を女子生徒に踏まれ、謝らせようと彼女の家のところで帰りを待ったが、かえって彼女たちに見つかり、追いかけられた。逃げる途中、たまたま前を歩いていた女児二人しか目に入らなくなり、ハンマーで殴った。殴る理由もないのに悪いことをしたと思った。二人を殴った瞬間、理性を失い、一線を超えてしまって後は何をやっても構わないと思うようになった。》

 《母親 息子は子どものころから神経質で消極的だった。だからそんな我が子に積極性を持たせようと甘やかさずしかりつけ気味に育てた。小学校三年生のころ異様な泣き方をした。専門医にノイローゼと診断され、それをしおにしつけを緩めた。》

 《父親 息子とはあまり話をせず、息子のことを知らなさすぎた。》

 こうした言葉からわかるように、少年は祖母の死をきっかけに死への関心というテーマに目覚めた。内部のデジタル化の命じるままに少年はテーマに沿ってスケジュールを次々に書き込んで殺人にいたっている。母親はこのままでは社会(デジタル・ネットワーク社会)に適応できないかも知れないという不安から、息子をありのままに受けとめることができなかった。父親は自分が社会で生き残ることに必死で我が子に関心を向ける暇がなかった。家族が時代と社会のそのあり方を忠実に繰り込んで生きようとしたばかりに、崩壊した端的な例であると思う。

(1997年秋)


せりざわ・しゅんすけ●1942年生まれ。文学・思想・事件・時代状況など幅広い視座から戦後社会現象を論評。特に家族、性、子ども、世代といった観点で現代の大衆を鋭く見つめた執筆活動で注目される。
著書に『現代(子ども)暴力論』『眠らぬ都市の現象学』『「イエスの方舟」論』、共著『いじめの時代の子どもたちへ』ほか

前のページへ
CONTENTSへ幕張アーバニストTopへ幕張新都心Indexへ