都市について考えるとは、まずそれがどのように複雑で多様な力に貫かれているか、その結果、どのように都市概念を変化させるかを理解することである。そのとき輻輳して解きがたい条件の絡み合いに直面するだろう。デジタル化した情報環境もこの複雑な条件のひとつにすぎない。コンピュータの異様な進歩を取り上げ、インターネットがどう発展するかを論議することは、コンピュータあるいはマルチメディアの専門家であれば難しいことではない。しかし都市の変貌は、デジタルな環境だけで説明できるほど単純ではない。
たしかにわれわれは、すでに距離感なしに遠隔通信のネットワークに組み込まれていることを否定できない。かつて都市を定義してきた共同体的な要素が変質してしまったことも間違いない。かりに都市が人間を共同体化するものだと定義しても、その共同性はもはや身体を中心とした近隣関係だけではない。地理的にどこにいるか分からない相手との繋がりの方が身体的な近接以上に親密であっても当然なのだ。情報交換だけから見ると、実体的な都市はネットワークのなかに消滅したように見える。しかしむしろこの情報は都市を世界化しているのであり、もはや国家の枠は都市にとっては次第に意義を失いつつあると言っても差し支えない。情報だけではない。
人間の移動もいまや国境を超えてひろがる。そのときわれわれは都市を考える政治学をもつことになるのだ。かつての植民都市にたいするポスト・コロニアリズムのほかに、国家の枠を超えるポスト・ナショナリズムという批判的視点をもつようになってきた。われわれはいまや都市概念の脱構築を迫られているのだ。世界の政治的構造的な変化と無縁でいられなくなった。やがて都市はおそらく国家よりも大きな単位として存在することになるだろう。