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精神医学の世界では「精神異常」という言葉は使いません。「正常」と「異常」はその時々の「常識」や「社会通念」を物差しとして測られることが多く、両者の境目に線を引くことは精神医学の仕事ではありません。もし端からみて「異常」と思える行動をとっていても、その人が所属する集団の中でそれなりに秩序を保っており、その人の生活が破綻していなければその人は決して「異常」とは思われず、精神科に来る(連れてこられる)必要はないわけです。(宗教によっては教義を厳格に守ることが、信者でない人から見るとやや「異常な」考え方や行動に見えることがあります)
しかし、何らかの形で行動や生活に破綻すると、それを解決するために、精神科に受診するという選択肢が浮かび上がることになります。精神科の診察で判断しなくてはいけないのは、その破綻している行動が本人の意思に基づいて行われているのか、誰かの意志によって行っているのか、あるいはその人だけに生じている幻覚や妄想に基づいて行われているのかということなのです。幻覚や妄想、あるいは単なる思いこみに基づく行動であれば、精神療法や薬物である程度は治療が可能ですが、その人の考え方や性格に由来する行動であればそれを「治す」というのは簡単にはできません。つまり厳密には病気とは言えないため、その行動には医療は介入せず、その人自身に責任を負ってもらうということになります。(→Q11参照)
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